2013年8月11日日曜日

「仲裁地」と仲裁の会議及び審問手続が実際に行われる場所の区別



UNCITRAL国際商事仲裁モデル法
20条(仲裁地)
(1)
当事者は、仲裁地について自由に合意することができる。かかる合意のないときは、仲裁地は、当事者の利便を含む事件の諸事情を考慮して、仲裁廷が決定する。
(2)
本条(1)項の規定に関わらず、仲裁廷は当事者が別段の合意をしていない限り、仲裁人の合議、証人、鑑定人もしくは当事者の審問、又は物品その他の財産又は文書の検認のために、適当と認めるいかなる場所においても会同することができる。
31条(判断の形式及び内容)
(3)
判断には、日付及び第20(1)項に従って決定された仲裁地を記載しなければならない。判断は、その地においてなされたものとみなす。


「仲裁地」と仲裁の会議及び審問手続が実際に行われる場所が異なる場合がある。両者を区別することが重要である。
「仲裁地」とは、仲裁手続といずれかの国の法体系とを連結するための法的な概念であって、実際に仲裁手続が行われる場所ということでは必ずしもなく、それとは全く関連のない地であっても構わない。
ICC仲裁規則に定めのない事項については仲裁地の属する国の仲裁法が適用される。仮に将来仲裁判断の取消訴訟をする場合には、多くの国では、当該訴訟は仲裁地国裁判所の専属管轄であるとされている。また、仲裁判断の承認・執行の局面においても、仲裁地がどこの国に属しているのかは、一定程度影響を及ぼす場合がある。したがって、「仲裁地」の概念は非常に重要な意味を有している。
モデル法 第20条(2)は、 「仲裁廷は当事者が別段の合意をしていない限り、仲裁人の合議、証人、鑑定人もしくは当事者の審問、又は物品その他の財産又は文書の検認のために、適当と認めるいかなる場所においても会同することができる」と規定する。ICC仲裁規則では、仲裁地は、当事者間の合意がある場合には合意内容にしたがって決定され、合意がない場合には仲裁裁判所によって決定される(ICC仲裁規則14条1項)。
実際に審問手続及び会合等の仲裁手続を行う場所については、当事者に別段の合意がない限りは、当事者と協議の上、仲裁廷が適切と思料する場所で開催することができる(ICC仲裁規則14条2項)。
また、仲裁廷による協議は、仲裁廷が適切と思料する場所で行うことができる(ICC仲裁規則14条3項)。