仲裁の手続法は、大抵は仲裁地の仲裁法である。それにもかかわらず、当事者は仲裁地ではなく外国の手続法で合意しようとする例外が稀にある。
手続法の定義
時折、国際仲裁において発生する様々な "内部"と "外部"の手続上の問題は、仲裁「手続法」によって支配されると言われる。仲裁「手続法」の概念はcurial
law、lex
arbitri、 又はloi de
l'arbitrageと 呼ばれる 。一般的には、仲裁の手続法は、仲裁手続と仲裁地の裁判所との間の外部的関係、及び仲裁の内部行為を規律する規則を規定する、仲裁地の仲裁法だ。
仲裁の手続法は、仲裁合意の準拠法及び基本契約の準拠法とは区別される。その代わりに、仲裁の手続法は、内部と外部の両方の問題に関して仲裁手続自体の準拠法である。原理的には、仲裁契約又は基礎契約の準拠法とは異なる国家の法でもよい。
仲裁の準拠法たる手続法と、仲裁手続に適用される手続を区別することも重要である 。以下に詳述するように、ほとんどの仲裁規則では、仲裁手続に事実上何ら手続上の要件を課しておらず、あくまで一般的な
デュー·プロセスの 要件を 規定している。 仲裁手続法は、現地の民事訴訟法ではない
仲裁手続法の選択は、選択された国家の民事訴訟の現地法ではない。むしろ、手続法の選択は、 選択された国家の 仲裁法を指す。例えば、当事者が米国の手続法が仲裁に適用されることに同意している場合、それは、連邦民事訴訟規則が仲裁に適用されるという意味ではなく、米国の仲裁法(FAA及び判例法を含む)が仲裁に適用される。
仲裁地の手続法以外の手続法の選択
事実上すべての場合において、仲裁の手続法は、 仲裁地の法である 。
それにもかかわらず、非常に珍しいケースでは、当事者は仲裁地の仲裁法や他の法律と異なる仲裁手続法の適用に同意する。仲裁地以外の手続法を選択する当事者の自律性は、、物議を醸している、いくつかの当局がこのような自律性を否定している(国際仲裁における当事者自治の一般に受け入れられるにもかかわらず)。実際問題として、外国手続法の選択にかかる当事者自治はごくまれにしか行使されない。当事者が仲裁地以外の手続法を選択すると、かなりの不確実性とリスク(後述)が生じる。実際には、仲裁の手続法は、仲裁地のものと実質的に異なることはない 。別段の定めがない限り、ほとんどの裁判所は、 当事者が 仲裁地の仲裁手続法を意図したとみなすべきであると判示する。実際には、当事者は、外国手続法を選択することはない。
外国手続法の選択の結果
外国の手続法の選択は、潜在的に重大な影響を有する。最も重要なのは、外国の手続法の選択は、仲裁地の裁判所以外の外国の裁判所は、仲裁判断を取り消すかもしれないという可能性をもたらすことである。外国の仲裁手続法の選択はまた、仲裁の内部及び外部の手続的な側面に仲裁地以外の法律の適用をもたらす。いずれの可能性も、当事者が通常望まない、かなりの不確実性をもたらす。
NY条約第5条(e)は仲裁判断の承認及び執行を拒否できる場合として、「判断が、まだ当事者を拘束するものとなるに至っていないこと又は、その判断がされた国若しくはその判断の基礎となった法令の属する国の権限のある機関により、取り消されたか若しくは停止されたこと」の証拠を提出した場合をあげる。
仲裁地外の裁判所が裁定を取り消すことができる可能性はかなりの不確実性をもたらす。